キー(調)
曲はそれぞれが自分のキー(調)を持っています。
キーを決めるのは、その曲の中で中心的に使用されるスケールです。
メジャースケールが中心ならメジャーキー(長調)、マイナースケールが中心ならマイナーキー(短調)になります。
メジャーキーの場合は主にメジャースケールが使用されるため、当然ながらスケールの性格と同様に明るい曲調になります。マイナーでも同じくスケールの特徴が現れます。
スケールはこの他にもたくさん存在しますが、メジャー・マイナーのみが基本の音階として特別に扱われており、メジャー・マイナー以外のキーはありません。1
すべてのパート(楽器やボーカル)が 1 つのキーに沿って演奏することで調和の取れた楽曲になります。
| スケール | キー |
|---|---|
| C メジャースケール | C メジャーキー(ハ長調) |
| A マイナースケール | A マイナーキー(イ短調) |
単純な対応関係なので、わざわざ分ける必要がないと思うかもしれませんが、この2つは実は別のものを指しています。まずスケールという音の並びが先に存在し、それを利用している曲の調(雰囲気)を同じ名前のキーで呼ぶ、と理解しましょう。
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調号
D メジャースケールではファとドにシャープが付きます。
ということは、主に D メジャースケールの音を使用する D メジャーキーでも同様に、その 2 音にはいつもシャープが付いていることになります。
五線譜で表記する場合、次のようにシャープを臨時記号として付ければよさそうです。
D メジャースケール(臨時記号)
しかし、どうせ常にシャープが付いているのなら、次のように左端にまとめて表記してしまったほうがスッキリします。このシャープまたはフラットを調号といいます。
D メジャースケール(調号)
このように、調号によって曲のキーを簡潔に明示することができます。
五度圏(サークル・オブ・フィフス)
どのキーにいくつシャープやフラットが付くのか覚えるのは大変そうですが、五度圏と呼ばれるツールを使うと視覚的・体系的に理解しやすいです。
五度圏
Circle of Fifths
この円の各領域(同じ色で塗られた部分)はメジャーキー(外側)とその平行マイナーキー(内側)の組み合わせを表しており、隣のキーとの間隔は 5 度です。時計回りに 1 つ進むと 5 度上がり、反時計回りに 1 つ進むと 5 度下がります。
「5度下がる」ということは、言い換えると(オクターブを無視すれば)「4度上がる」ということです。よくわからない人は以下の関連記事も参照してください。
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各キーの調号は外側に示されており、見ての通り C から右に進むにつれて 1 つずつシャープが増えていき、逆に左回りはフラットが増えていきます
なぜそうなるのかはあまり重要ではないので、あまり深く考えなくても大丈夫です。細かい理屈がわからなくても、この図はさまざまなケースで役に立ってくれます。
- 楽譜の調号に対応するキーが思い出せないときに調べる
- キーはわかっているがどの音にシャープ/フラットがつくのか思い出せないときに調べる
- キーに関係するコードを調べる(後述)
また、図を実際に見なくても「5 度上のキーはシャープが 1 つ増える」という知識を持っていれば、別のキーに移動したときに「今のスケールに加えて 1 つシャープをつければいい」などと判断できます。
最初から全部覚えようとするのではなく、作曲や演奏を続けていくうちに少しずつなじんでいけばいいでしょう。
Gb と F# は表記こそ違いますが、同じ音を示しています(異名同音)。なのでこれらをトニックとするスケールも同じ構成音を持ちます。フラットとシャープのどちらで表記するかの違いと考えておきましょう。
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転調
それぞれの曲がキーを持っていると述べましたが、途中から別のキーに変わることもあります。これを転調と呼びます。
五線譜では、転調は次の例のように調号を途中に記載して表現します。
C メジャーから Eb メジャーへの転調
転調するのは、主に曲の雰囲気を変えたいときです。キーとは「曲の雰囲気を決めるもの」なので、それを途中で変更することで展開を盛り上げたり、引き締めたりできます。
ただし、どのキーにでも無制限に移動できるわけではなく、ある程度のお約束は存在します。といっても、最終的には多くの人が聴いていて気持ちいいかが最重要といえます。
カラオケで音が高くて歌えないときに「キーを下げる」ことがありますが、やっていることは転調とまったく同じです。
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ただし、特定のキーに縛られない曲や、メジャーとマイナーが混ざったような曲もざらに存在します。ここでは話をわかりやすくするため、ポピュラー音楽のごく基本的な考え方のみを紹介しています。 ↩